先日、発達障害のお子さんを持つ日本人のお父さんから、家族をアメリカに連れてくるべきかどうか迷っているということで相談がありました。私はアスペルガーの娘とともに渡米して約5年になりますが、娘のことを考えると渡米はデメリットが大きかったと正直なところ強く感じています。今回は正直に、発達障害の子どもの渡米には、どんなメリット・デメリットがあったのかを語っていきます。
渡米当初の問題
特別支援のレベルと娘の状況との不適合
アメリカに渡ったのち、娘は海外からの生徒を地域の学校に振り分ける機関での検査を受け、現地のElementary Schoolに入学することになりました。日本の小学校での特別支援状況や日本の医師からの紹介状、そしてIQ検査の結果などを提出した上で、娘に合う学校を選定してもらいました。
入学後、娘は「週に2回、特別支援のクラスで1時間の授業を受ける」という支援を受けることになりました。しかし、娘の適応はとても遅く、振り分けられた支援では全く娘の状況と合わないことが徐々にわかってきました。
先生方の期待通りにはまるで英語を覚えず、先生方の話す内容を全く理解できず、一言もな話そうとせず、ただ固まっている娘に、先生方もとても困惑したようでした。
のちにより娘に合う学校へとの転校を勧められましたが、実際に転校するまでに1年かかってしまいました。
本人の不安増加
アメリカに来たことによる環境の大きな変化に、娘の不安は増加していきました。本人はいつも「学校楽しいよ!」と言っていたのですが、家での荒れ具合は日本にいた頃よりすさまじくなっていました。
困ったときに助けを求められない
もともと娘は何か困ったことがあると、すぐに先生に言うようなタイプの子でした。しかしアメリカに来てからは、様々なトラブルや不満にぶち当たっても、自分の言葉でそれを人に伝えることができません。困ったことがあっても自力で表現できず、フラストレーションをためていきました。
私は、英語での質問の仕方や言いたいことの伝え方を娘に教えてもみましたが、娘は「英語を話せない!」の一点張りで、自分の言葉で何とかしようという意欲を持ちません。娘の「英語を話せない!」は「英語を話したくない!!」のようにも見え、強い英語への拒絶のようにも見えました。
その後の問題
相性の良い医師と出会うまでの長い道のり
渡米して最初に、ホームドクターを決めました。そこで、自閉症の娘に合った小児精神科医を紹介してもらい、地域の大きなChildren's Hospitalに通うことになりました。しかしそちらの精神科医との相性が合わず、けれど別の病院を見つけるのも困難なため、結局2年以上そちらでお世話になりました。医師とのやり取りのむずかしさ、新しい病院探しのむずかしさは下記の記事をご参照ください。
幸い、現在はよい医師と巡り合え、安心して医療を受けられるようになりました。
4回の転校
先ほど、最初の学校の支援内容と娘の状態がマッチしていなかったことを書きました。その後、娘は転校するのですが、そこでも学校の様子と本人の状況が合わず、また転校、転校と繰り返すことになってしまいました。
最終的に現在は、娘と似た自閉症的な生徒の集まった学校に入り、やっと彼女は快適に過ごせるようになりました。転校は本人にとって負担が重いのであまりさせたくなかったのですが、本人の安心して通える学校と出会うことができたので、結果的にはよかったと思っています。
現在の問題
とにかく英語が入らない
重度の英語習得困難、とでも言いましょうか…。英語を話すのがとても嫌なようで、何か言わなければならない場面が来ると娘は「I don't know.」で済ましてしまうそうです。自力で何とかして英語で話そうとするとか、話せなければ文章を書いて伝えようとするとか、そういう意欲が一切ありません。
自閉症の人は外国語の習得が極度に苦手な場合もあるというのをネットで見かけたこともあり、このまま娘に英語環境で生活させるのは厳しすぎるのではないか、などど悩むところです。
言葉の壁による同世代の子との接触不足
日本にいた頃は、娘は周りの子とそれなりに話をしたり楽しく過ごしていました。アメリカに来てから、娘は同世代の子と接触することが極度に減っている状態です。現地校では、周りの子が話しているのを見て楽しんだりはしているようですが、会話に参加することはないそうです。
渡米してよかったこと
正直思いつかない・・・
「アメリカにお子さんを連れてきてよかったことはありますか?」という質問に、何も胸を張ってこたえられることがないという、衝撃の事実に直面しています…。
慣れた環境で安心して学んでいけたほうが、うちの娘にはよかったのではないかと正直思います。
日本の中学より、今の特別支援が合っている可能性はある
1点、ここはアメリカの方がよいかもと思える部分は、「現在娘の通っている中学校は専門的ケアをしてくれるので、娘の精神的健康と学力向上に役立っている」というところです。
もし娘が日本で暮らし続けたら、普通の公立中学校の特別支援学級と一般のクラスを行き来しながら通学することになっていたと思います。今の娘から想像すると、公立中学の普通授業は娘の能力と精神状態には過酷である可能性が高いと思うのです。なので、少人数の生徒に複数の先生がついて丁寧に見てもらえる現在の教育環境は、娘にとって悪くないものだと思っています。
まとめ
ある方からの質問のおかげで、アスペルガーの娘がアメリカで暮らすことのメリット・デメリットを改めて考えてみる機会となりました。正直なところたくさんのデメリットも見えてきて、ちょっと絶望した気持ちになったりもしましたが、とりあえず現状を正直にまとめてみました。